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ライブレポート onlinedeofflineプロデュースDROPSHIP LIVE ep.7
8月9日に大阪のSunhallで開催された、DROPSHIP LIVE。開演を待つ最中、日本人の声のみならず、韓国語や中国語、英語で話す声が聞こえてきて、まさにこのイベントが目指すグローバルな音楽交流の場となっているのを感じた。
CHOILB
- WALK
- Love is Great!
- Or Not
- $$
- Independent Music
- Space Flight 2
- Run Away!
まず登場したのはCHOILB。WYBHクルーで、現在はdejavu groupに所属する。
彼の正規アルバムからの選曲は、シンギングもラップも実力を惜しみなく感じられるラインナップだ。1曲目『WALK』は愛犬のユルムとの穏やかな日常と自分の音楽人生を重ねたCHOILBらしい優しく文学的なリリックの楽曲でスタートした。この曲が収録された[PUG LIFE 1/4]は、愛犬家の愛情が詰まった曲が他にも収録された名盤と言えるので、2019年と少し前のリリースだが是非散歩のお供に聴いて欲しい。
彼の楽曲は人柄を感じられるような温かみのある作詞が特徴的だが、ラッパーとしてのスキルも忘れてはならない。『Independent Music』は、そのまま”独立音楽“と和訳できる『독립음악』という名前でリリースされている。音楽を本格的に始めるのが遅かったというCHOILB、家族に負担をかけた過去を土台に、自分の音楽で飛び立っていこうとする気持ちを畳み掛けるように歌う姿には、ライブでしか感じられない圧を感じた。仁川出身の彼は、『$$』でも歌っているように同級生にC JAMMなど著名なラッパーが多く存在する。周りと比べてしまう複雑な感情を独白していくことは、自分を誇張したり誰かと対立するために生まれたHIPHOP本来の文化とは異なる路線であり、アーティスト自身枯らしたら自分の弱みを世間に曝け出すこととなる。しかしそういった面をCHOILBのような確固とした実力の上で歌い上げられると、途端に息を呑むような特別感動的なステージ、曲へと昇華される。
MCでは、「日本食が大好きです」「私は歌詞を書くのが上手です」など、メモしてきた日本語を披露するなどして観客を盛り上げ、「おすすめのアニメはありますか?」とファンとの会話も繰り広げたCHOILB。日本文化好きが多く集まったWYBHクルーらしい会話でも笑いに包まれ、会場は完全に温まった。
WONSTEIN
- Freak
- No Bad Dogs
- Valentine
- Infrared Camera
- Cassie ($)
- Merry-Go-Round
- I Don’t Believe The Chart
- Cool
- It’s not beautiful and it doesn’t hurt
- Your Existence
開始1発目に皆おなじみの『Freak』で観客からは一層大きな歓声があがる。SMTM9で披露されたのが2020年、4年経っても番組の枠を超え愛される名曲となった。
数ある人気曲、名曲の中でも、今回私が個人的に特に聴けて嬉しかったのは、SMTM10を通して出来上がった『Merry-Go-Round』だ。過去、2023年3月のDROPSHIP PARTYにて予告なしにやってきたsokodomoが、オカモトレイジのDJプレイ中に急遽この曲を歌ったことがあった。その時現場にいた私はいつか他の参加メンバーのLIVEでも聴きたいものだと思っていたのだが、それが早々に、しかも日本で叶うとは。次こそはどこかでZion,Tとsokodomoも揃った3人の完全体で聴いてみたいと更なる夢ができた。会場はサビのリズムに合わせて観客のジャンプで揺れ、これほどまでにない高揚感に包まれた。
さて、Wonsteinの魅力といえば、やはりラッパーとしての実力はさることながらライブでも音源ままのような歌声の美しさだろう。今から寒くなる季節にもっと聴きたくなるのが、本公演でも披露した『It’s not beautiful and it doesn’t hurt』だ。そもそも2018年にYoutubeに投稿されたこの曲の前身動画は、同年リリースのBTOBの『Beautiful Pain』をカバー、再編成したものだ。それを完成形にしたのが本作である。長年応援してきたファンにとっては、まさかこの曲が正式に配信されるなんて!と嬉しい衝撃だったろう。原曲の「아름답고도 아프구나(美しくも悲しいね)」から、Wonstein verでは「안 아름답고도 안 아프구나(美しくなく悲しくもないね)」になっているこの曲。Wonsteinの哀愁ある作詞はぜひ両方聴き比べて楽しんでみてほしい。ちなみに2024年1月に公開されたMVは北海道で収録されたため、ウィスキー片手に真冬の聖地巡礼に行くのも良いだろう。その際は寒さと車に気をつけて。
ちなみにWONSTEINの登場から突如私の隣に全歌詞合唱韓国人女性ファンが現れ、その熱量に引っ張られかなり気持ちが昂った。周りの声が近いのも、キャパのちいさなライブハウスならではの良き体験だ。
lIlBOI
- WASABI Room Freestyle Vol.2
- Freak
- On it
- On Air
- HIGH
- Travelin’
- Officially Missing You (GEEKS)
- Credit
勢い良く登場したlIlBOI。以前もDROPSHIP LIVEに参加したことのある彼が、数ヶ月しか経過していない同イベントでどんな変化を見せてくれるのかかなり期待していたが、予想を遥かに上回るパフォーマンスとなった。
サブスク未発表曲の『WASABI Room Freestyle Vol.2』や、H1GHR MUSICに移籍後リリースした『HIGH (feat. pH-1)』、SMTMでは涙なしには聴けなかった『Credit』など、新旧の名曲を織り交ぜた飽きさせないセットリスト。SMTM4の『On it』からSMTM9の『On Air』という時代を追った流れも、彼の業績の積み重ねを感じられてとても綺麗で、まるで単独コンサートのような重みと満足度の曲の数々だ。
特に観客が湧きあがったのは、ユニット GEEKS時代に一世を風靡した『Officially Missing You』だろう。今回まさか聴けるとは思わず、目頭が熱くなった一曲だった。lIlBOIのコアファンも多く参加していたようで、会場からは一緒に歌う声がちらほら聞こえた。当時韓国HIPHOPジャンルの中では他人をdisる曲が多く発表されていた時代だが、GEEKSによる『Officially Missing You』は原曲のR&B、彼らのHIPHOPの要素を巧みに併せた情緒的な曲として流行した。詳細は下記リンクでも記載。
GIRIBOY
- Hogu
- Drive mE cRaZy
- Let’s Not Love Each Other
- Traffic Control
- Because You’re Pretty
- I’m Sick
- Tik Tok (feat. CHOILB)
- Space Flight 2
久々の来日公演のGIRIBOYはお馴染みの人気曲『Hogu』を自己紹介にしてスタート。本日のトリの登場に一際大きな歓声が湧き上がる中、続いて『Drive mE cRaZy』とハッピーな曲が連続。
「この曲は…とても悲しい曲です。男友達女友達って(日本語で)なんて言うのかな?very仲良いtwo people…but…NO LOVE!!WHY!?why no love!? because…愛してしまってから別れると、very importantともだちがないですね〜」と、ファンなら誰もがあの曲か!とわかる紹介を丁寧にしてくれて『Let’t Not Love Eavh Other』が始まる。特に大きなモーションもしない、ただ一人ステージにぽつんと立つGIRIBOYが、人間同士の複雑な愛について歌い上げる。GIRIBOYの数ある失恋、悲恋ソングの中でも特に愛され共感されている名曲中の名曲。先ほどのMCのテンションとは別人のように、優しくも淡白だった歌声が進むにつれてどんどん溢れる如く感情的に。曲中の主人公になったかのような感覚になるほど世界観にのまれ、思わず無いはずの失恋の記憶が浮かび感傷的に。男女で仲が良いからといって、そこに絶対にお互い恋愛感情があるとは限らない。薄ら好きだったとしても、長い友達付き合いの末の単なる情かもしれないし、将来や生活ペースを考えたら手を引いておこうと思うこともあるだろう。そんなloveとlikeの違いから、恋へ発展させることをやめる様子を独白的に綴った、美しくも人間くさい曲だ。
今回のライブでは『Because Your Pretty』も披露。その際は、「sometimes I make happy song. but 次の曲 is happy vibes sad lyrics.」と言って始まった。こちらは彼女に振られた未練を振り切るが如く嫌味を言いまくる失恋ソングである。GIRIBOYのリリシスト的真髄は、やはり失恋、悲恋ソングに宿ると再度確信する日となった。
ラスト~アンコール
単独コンサートではないライブイベントの醍醐味といえば、出演者総出のラストお互いに客演し合ったここでしか聴けない曲を披露してくれるところ。今回だと、みんなが待ちに待ったWonsteinとlilboi二人揃っての『freak』『FRENDS』。個人的に韓国HIPHOP界で『FRIENDS』が5本の指に入るほどお気に入りの曲だったので、当日の全ての記憶が吹っ飛びかけるくらい感極まるものがあった。苦楽を共にした絶妙な距離感の二人が、こうして異国の地でパフォーマンスを披露してくれることに胸が熱くなる。
もちろん本公演にトリを飾ったGIRIBOYがヘッドライナーを務めるクルー・WYBHの面々も欠かせない。CHOILBでもGIRIBOYでも大盛り上がりした『Space Flight 2』を、今回参加者全員揃っての3度目の披露。WYBHクルーではないWonsteinとlilboiが一緒に楽しんでいるのも激レアな風景。この曲何回擦るねんとも思いつつ、やっぱりボルテージ爆あがりになってしまうのがこの曲この集合体のすごいところだ。この曲を最後に、我々は音楽を通して長いようで短い旅路を終えた。
まとめ & 次回イベント予定
金曜日ということもあり社会人はなかなか来づらい日程であったかもしれない、今回私が参加した大阪公演。しかし、普段東京公演にお邪魔することの多かった私にとって、初の大阪は一緒に歌ったり笑い声やレスポンスする声量だったり、東京よりも元気ではつらつとした印象を受けた。土地柄なのか会場の狭さゆえ声が届きやすかったのかは分からないが、一体感のある素晴らしい体験になった。
そして来たる12/20、東京にて年内最後のonlinedeoffline主催イベントが開催予定。前売りも現在発売中だ。
お馴染みのHANYOHANやDNOPF , HOLISHIPをはじめ、12人のアーティストが参加予定。今回なんとシンガーのMOON SUJINが初参加。過去日本メディアのインタビューで、安室奈美恵や宇多田ヒカル、中島美嘉などのJPOPも聴きながら育ったということも話していたことがあるMOON。HIPHOPアーティストとの多数のコラボや、POP、R&B界など、その幅広い作風で縦横無尽に韓国音楽界を行き来するシンガーソングライターとして活躍する彼女のステージに注目だ。